岩手のごっつぉ食べらんせ

真鱈
白子や卵をたっぷりと蓄え 旬を迎えた冬の真鱈
本州一の水揚げ量と、抜群の鮮度が自慢

 1月の午後1時過ぎ。帰港した船から次々と運ばれてきたのは、全長60cm前後の大きな真鱈。年間を通じて獲れるが、冬の真鱈は白子や卵をはちきれんばかりに蓄えている。

 宮古港の真鱈は、本州一の水揚げを誇る。鮮度の良さも自慢で、地元では刺身で食すことも珍しくない。毎年1月末頃には、真鱈の美味しさを知ってもらおうと、「宮古 真鱈まつり」を開催。県内外から多くの客が訪れ、にぎわいをみせている。

[生産者] 佐藤勇さん
[生産者] 佐藤勇さん

岩手県山田町出身。1949年生まれ。漁師の家庭に育ち、20代から海の仕事に携わる。イカ釣りを経て20代半ばからタラ漁へ。漁の技術には定評があり、料理バラエティ番組の特選素材に真鱈が取り上げられた際には、腕利きの漁師として紹介された。

3人のチームワークで1匹1匹釣り上げる「底延縄漁」
船上ですぐに氷詰め 抜群の鮮度の良さ
船上ですぐに氷詰め 抜群の鮮度の良さ

 寒冷な深海に生息し、北海道や東北の太平洋沖で水揚げの多い真鱈(まだら)。漁には主に2つの方法がある。ひとつは、「底曳き網漁(そこびきあみりょう)」。漁船から伸ばした網を曳航(えいこう)しながら魚を獲る。もうひとつは、「底延縄漁(そこはえなわりょう)」。1本の幹縄にいくつもの枝縄を付けて、その先端に餌を仕掛ける。

 佐藤勇さんは、50年近く真鱈の「底延縄漁」を続けている。枝縄にイワシを付けて、沖に出るのは深夜1時頃。気心の知れた漁師2人と船に乗り込む。2時間前後で漁場に到着し、縄を沈めて約40分。船上が慌ただしくなる。

「機械で縄を上げながら、釣れた真鱈のサイズを急いで選別します。大きさによって箱に入れる真鱈の数が変わるからです。箱を補充したり、氷を詰めたり、効率よく作業できるように3人で役割分担しています」

 近年は船の燃料費や発泡スチロールの高騰、従来の餌だったサンマの不漁など、漁師にとって厳しい状況が続く。しかし、佐藤さんはこれからも真鱈漁を続けていきたいと前を向く。

「以前よりも経費がかさんで厳しいですし、将来を考えると後継者不足も心配です。けれども、たくさん釣れた時は面白いし、自分が獲った真鱈の美味しさにも自信を持っています。底延縄漁の良さは、1匹ずつ釣るので身が傷つかないこと。それに、船上ですぐに氷詰めするため鮮度が良く、刺身でも味わえます。加熱しても身がくずれにくいので、鍋物やフライでも違いがわかると思います。三陸の真鱈の良さを、多くの人に知ってほしいですね」

つながるレシピ
真鱈の唐揚げ 甘酢餡かけ

材料

真鱈…4切
ピーマン…1個
タマネギ…1/2個
ニンジン…1/2個
醤油、砂糖、酢、酒、生姜…少々

作り方

真鱈の切り身に醤油と酒、生姜で軽く下味をつけた後、片栗粉をまぶして約1分揚げる。甘酢餡は、酢1・醤油1・砂糖2の比率で合わせ、片栗粉でとろみをつける。素揚げした野菜と甘酢餡を絡める。甘酸っぱい餡が、真鱈の淡白な味わいを引き立てる。

 「てんまる食堂」は、令和3年秋にオープンしたニューフェイス。地元のPRにもつながるメニューとして、宮古の真鱈を使ったラーメンを考案した。

「天ぷらやフライなども試しましたが、ラーメンと合わせてみた中で一番相性が良かったのが唐揚げでした。スープにも工夫を凝らし、真鱈を出汁として使うのではなく、特製のオイルを開発することで、旨味だけを抽出することができました。三陸の真鱈ってすごいと感じたのが、食感です。身に厚みがあって食べ応えがあります」と阿部さん。

 真鱈の美味しさを余すことなく味わえる一杯をお試しあれ。

麵の上には、大きな真鱈の唐揚げが2個。最初はサクっとした食感、次第にスープがしみ込み、しっとりとした口当たりへと変化していく。スープには特製の真鱈オイルを使用。臭みはなく、真鱈の旨味だけが凝縮されている。

まんぷくラーメンの店 てんまる食堂
代表

阿部恵さん

宮古市出身。高校を卒業後、宮古市内の老人介護施設に就職。調理スタッフとして約20年勤務し、副主任も務めた。2021年9月に夫婦で「てんまる食堂」を開店。麺類の他、定食や単品メニューも味わえる。

岩手県宮古市大通2―7―18
11:00〜14:30、17:00〜20:00(日曜11:00~17:00)/水曜定休/0193-65-8376

「真鱈」の取材は
下記の皆様にご協力いただきました。

  • 三陸やまだ漁業協同組合
    〒028-1332 岩手県下閉伊郡山田町中央町11番14号
    TEL:0193-82-1122
  • まんぷくラーメンの店 てんまる食堂
    〒027-0083 岩手県宮古市大通2丁目7−18
    TEL:0193-65-8376

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