Vol.018 恋し浜ホタテ
大船渡市の越喜来湾は、狭い湾がギザギザと入り組んだリアス式海岸のひとつ。沖に向かって出口が狭いため、波が穏やかなのが特徴だ。湾内には親潮と黒潮が流れ込み、山からは雪解け水が注がれる。沖と山からの栄養が、味自慢のホタテを育む。「恋し浜」の名は駅名にもなり評判に。街の盛り上げにも一役買っている。
岩手県大船渡市出身。1971年生まれ。21歳から家業であるホタテ漁を継ぐ。恋し浜ホタテのブランド化と認知度アップのために、生産から広報まで幅広く活動。漁業士として漁業者支援や担い手育成にも取り組み、現在、岩手県漁業士会会長を務める。
ホタテの栽培は、受精卵が回遊し始めるところから始まる。稚貝を座布団かごと呼ばれる専用かごに入れて育て、直径が8、9㎝の大きさになるまでに約1年。その後、ホタテの「耳」と呼ばれる部分に穴を空けてピンを通し、海中に吊るす。栄養を摂取したホタテはさらに大きくなり、11㎝を超えると出荷される。ここまで育てるのに約2年を要する。
「湾内で養殖できるホタテの数量は限られていますので、『量ではなく質で勝負しよう』と取り組んできました。大事なのは、ホタテ貝の表面に付いた雑物の除去です。栄養の摂取に影響を及ぼしますので、丁寧に取り除いています」と、佐々木淳さんは語る。
大きく育ったホタテは、肉厚で食べ応えがあり、塩気と甘みのバランスが良い。「そのままが一番。最初は味付けしないで食べてほしい」と佐々木さんが言うのも頷ける。
昭和60年頃には築地市場で日本一の卸値をつけたこともある。だが、従来の出荷方法では、地元に出回ることがほとんどなかった。それならば、自分たちで直接販売をしよう。2003年、佐々木さんたちが中心となり小石浜青年部を立ち上げた。2009年からはブランド名を「恋し浜」に変更し、その名は全国に広がっている。
「イベントに参加して、自らホタテ焼きを提供することもあるのですが、お客さんが『美味しい』と言って、もう一度列に並んでくれたりするんです。そんな姿を見ると、これからも良質なホタテをつくらなければと強く思いますね」。
ホタテの表面についた雑物を取り除いているところ。一枚一枚手間はかかるが、大きく成長させるために重要な作業だ。
●準備するもの
ホタテ、ヘラ
●作り方
- ホタテ貝の丸みを帯びた側を上に、平らな側を下にする。貝柱の底にヘラを入れて貝を外す。
- ウロ(黒い部分)をヘラで削ぐ。ウロを引っ張ると、貝柱の周りのヒモもはがれる。
- 貝柱にヘラで縦に切れ目を入れた後に、貝から外す。ヒモを添えれば、刺身の完成。
貝柱の底にヘラを入れる時は、第二貝柱(写真の位置)へ。
佐々木淳さん
今回は、生産者の佐々木さんが担当。「甘みと塩気のバランスの良さが恋し浜ホタテの特長ですので、刺身も焼きも調味料を使わず味わってください」。
ウロとヒモを外す時に、貝柱を外さないでおくのがポイント。
スルッと取れますよ。
「恋し浜ホタテの魅力は、肉厚で甘みがあるところ」と菊池亮さん。帆立バーガーを作るにあたって、貝柱を焼いたり、すり身にしてみたり、様々な調理法を試した。行き着いたのは、丸ごと貝柱が入ったクリームコロッケだ。クリームにはホタテの出汁をたっぷりと使用。頬張るとホタテの旨味が口いっぱいに広がり、越喜来湾の情景が浮かんでくる。ホタテは生きた状態で仕入れ、処理後の貝殻は恋し浜駅の絵馬として使われている。
大きな貝柱が丸ごと1個!
Chef’s Memo ホタテのクリームコロッケとバンズ、自家製タルタルソースが、絶妙なバランスで一体化している。
ホタテの貝柱は、お湯ではなく水の状態からゆっくりと茹でましょう。沸騰させ過ぎないことで、ジューシーに仕上がりますよ。(菊池さん)
菊池亮さん
岩手県大船渡市出身。1978年生まれ。小さい頃から好きだった地元のハンバーガーショップに入社。10年勤務し、2007年に独立。短角牛や門崎牛をはじめ県産の素材をふんだんに使用し、“ここでしか味わえないハンバーガー”を提供。バンズも自家製だ。店内にはオールディーズが流れ、1950~60年代の古き良きアメリカの雰囲気が心地よい。
岩手県大船渡市盛町字町9-5
営業時間:11:30~20:30
定休日:月曜
電話:090-2953-0997
「恋し浜ホタテ」の取材は
下記の皆様にご協力いただきました。
- 綾里漁業協同組合
〒022-0211 岩手県大船渡市三陸町綾里字中曽根66
TEL:0192-42-2151 - 岩手県漁業士会(佐々木 淳さん)
〒022-0211 岩手県大船渡市三陸町綾里字小石浜114-1
TEL:090-4555-3216 - THE BURGER HEARTS
〒022-0003 岩手県大船渡市盛町字町9-5
TEL:090-2953-0997