Vol.016 銀河のしずく
岩手県の県央部、北上川流域に位置する紫波町。平野が広がり、日照も十分なことから、ブドウをはじめとする果物や、野菜の栽培に適している。稲作も盛んで、岩手県産ブランド米「銀河のしずく」を育てる農家も増えた。青々としていた田んぼは、9月に入ると黄金色に染まる。
岩手県紫波郡紫波町出身。1963年生まれ。高校卒業後、地元のスーパーマーケットに就職。24歳の時に、代々続く農家を継いで就農。現在、銀河のしずく栽培研究会会長、八幡農業生産組合会長を務める。
種籾の発芽から田植え、雑草取り、刈り取りまで、米作りは約半年にわたる。「銀河のしずく」は中生品種で、9月20日頃を目安に刈り取りをする。
現在、日本でご飯用として栽培されている米の品種は、約300種。米の銘柄で選ぶ消費者も多く、人気品種は栽培面積を増やし、そうでなければ販路が消えていく。品種に求められるのは、「食味の良さ」と、「栽培環境に適している」こと。両方を兼ね備えていなければならない。岩手県でも新品種を開発していたが、なかなか定着させられずにいた。
生産者たちは思う。「岩手で米を作るからには、他県品種ではなく岩手オリジナルの品種を、胸を張って作りたい」。
2015年、待望の新品種「銀河のしずく」が誕生した。岩手の県央部で育てやすく、また食べたいと感じる美味しさを、妥協せず追求。冷害や病害に強い「奥羽400号」と、優れた食味を持つ「北陸208号」を掛け合わせることで、理想としていた品種が実現。開発に約10年もの歳月を要した。
現在、銀河のしずく栽培研究会会長を務める細川勝浩さんは、試験栽培の段階から携わった。いわば、幼子の頃から見守ってきただけに、思い入れもひとしおだ。
「銀河のしずくは寒さに強く、稲の丈が短いので強風でも倒れにくい。この地域の気候に適した米だと思います。米の特徴として、色つやが良く、白さが際立っています。食べてみると、甘みも粘りも強過ぎず、味のバランスが良いので飽きがこない。食味ランキングでは、安定して特Aを獲得しています。人気と実力を兼ね備えており、自信を持っておすすめできる品種です」。
銀河のしずくの魅力は、炊き上がりの輝くような白さ。食味のバランスの良さと、かろやかな食感も人気の秘密。
●材料
米…3カップ、 舞茸…半パック、ニンジン…小・半分、 ごぼう…1/3、油揚げ…1/2、 栗…10個、醤油…大さじ2、 みりん…大さじ1、酒…大さじ2、 塩…小さじ1/4、だし昆布…10㎝位
●作り方
- 米を洗い、ザルにあげておく。
- ニンジン、ごぼう、油揚げを3㎝の長さに千切り。舞茸はほぐしておく。
- 土鍋に米と具材、水550㏄、調味料を入れ、軽く混ぜる。
- ガスコンロにセットし、最初は強火。鍋蓋の縁に汁があふれるくらい沸騰したら、弱火にする。10~15分後に火を止め、さらに約10分蒸らして完成。
米の白さや具材の色合いを見せるなら、薄口醤油がおすすめ。
細川玲子さん
平成9年、岩手県食の匠に認定。紫波町在住の食の匠認定者5名と、「紫波食の匠の会“四葉のクローバー”」を結成し、食文化を次世代につなげるために活動。
「銀河のしずく」が誕生して以来、シャリ用の米として使い続けているのが、回転鮨清次郎を展開する株式会社田清だ。銀河のしずくの魅力について、本店店長の長岡さんはこう語る。「甘みも粘りも強過ぎず、かろやか。味のバランスが良いので、どんな魚介とも相性抜群です。それに口ほどけが良く、ネタとシャリの一体感が楽しめます。寿司はもちろん、冷めても美味しいので、おにぎりにもおすすめです」。
Chef’s Memo 左から、本鮪大とろ、天然真鯛、自家製づけ鮪、荒海活ほたて、三陸産たらの白子軍艦、釣りどんこ(肝味噌添え)。
岩手・三陸は魚介類の宝庫。鰈や鮑、帆立など、三陸ならではの旬の鮮魚を味わってください。(長岡さん)
長岡真宏さん
岩手県盛岡市出身。1968年生まれ。実家が寿司店だったことから、寿司・和食の道へ。高校卒業後、東京・銀座の寿司店や割烹で修業を積む。2004年株式会社田清に入社。現在、回転鮨清次郎盛岡津志田本店店長を務める。
岩手県盛岡市津志田町2‒1‒60
営業時間:ランチ11:30~15:00(14:45 LO)、17:00~21:00(20:30 LO)
定休日:無
電話:019-639-2815
「銀河のしずく」の取材は
下記の皆様にご協力いただきました。
- 銀河のしずく栽培研究会(細川 勝浩さん)
〒028-3441 岩手県紫波郡紫波町上平沢若宮56 TEL:019-673-6721 - 株式会社 田清
〒020-8567 岩手県盛岡市羽場10-100 TEL:019-632-8611