Vol.015 西わらび
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西和賀町は奥羽山脈のほぼ中央に位置し、豪雪地帯として知られる。肥沃な土壌は、春になると強い日差しを受けて雪解け水が染み込んで発芽を促す。養分をたっぷりと吸収したわらびは、茎が太く、繊維が柔らかくて、ねばりが強い。色合いが鮮やかで、アクが少ないのも特徴だ。「西わらび」のブランド名で人気を集めている。
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岩手県和賀郡西和賀町出身。1947年生まれ。農山漁村文化協会に勤務後、38歳で地元・西和賀町にUターン。町役場に56歳まで勤め、2001年からわらび作りを始める。西和賀わらび生産販売ネットワーク会長。
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茎が太く、繊維が柔らかくて、アクが少なく食感も抜群。西わらびならではの味わいを引き出すのが、土壌と地形だ。西和賀町は豪雪地帯であり、肥沃な土壌は、春になると強い日差しを受けて雪解け水が染み込んで発芽を促す。たっぷりの養分が、わらびを大きく育て、ねばりが増える。また、錦秋湖のあるこの町は、谷であるため、日差しを程よく遮ることで繊維が固くならない。
地域資源である西わらびの栽培が本格的に始まったのは2002年のことだ。2009年には、西和賀わらび生産販売ネットワークを設立。生産者と加工・販売業者、関係機関・団体が連携することで、西わらびのPRと販路拡大につなげている。
西わらびの栽培は、山でわらびの根を掘り、畑に植えてから成園化するまでに約2年を要する。最盛期は5月から6月と短い。生産者の一人、湯沢正さんは、最盛期には午前4時から収穫を開始。午前6時までの約2時間に集中して作業する。腰をかがめて覗き込みながら、食べ頃のサイズを摘み取り、次々に籠へと入れていく。
「高齢化・過疎化が進む中、西わらびの生産者は増えています。それは、設備投資がほぼいらず始めやすいこと。そして、西わらびにはブランド力があり、街の人たちが魅力を感じているからです。ぜひ多くの方々に味わってほしいですね」
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採りたての瑞々しい西わらび。断面からは、ねばりを含んだ水分があふれてくる。
わらび粉は、わらびの根茎を精製して作る。希少で高価だが、わらび餅に加工すると、極上の食感が生まれる。つるりとなめらかで、トロっと溶ける。一度味わうとやみつきになること請け合いだ。
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●材料
水…2ℓ、わらび…1㎏、重曹…20g
●作り方
- 大きな鍋でお湯を沸かし、沸騰後に重曹を入れる。
- 火を止めて、わらびの根元から入れる。
- 菜箸でわらびを泳がせる。 ※約20分
- 鍋に入れた状態で、一晩そのまま寝かせる。
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西和賀育ちの佐々木美代子さん(中央)と、スタッフさん。
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母ちゃんの店 わがや
岩手県西和賀町沢内字貝沢3ー647ー1
営業時間:11:00~14:00 LO ※土日~15:00
定休日:水曜 ※営業期間は4月~11月末迄
電話:0197ー85ー5320
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「西わらびの特長は、ねばりの強さ。熱の入れ方によってねばりの質も変わりますので、その違いをぜひ味わってほしい」と鈴木智之さん。グジェールはシュー皮を使ったフランス料理のひとつだが、主役となるのは西わらび。「一番ねばりが強いのが、生の状態なんです。この状態で味わえるのは、採れたてだからこそ」(鈴木さん)。生わらびの他、燻製とおひたしも一皿の中に。全てねばりと食感が異なり、西わらびの奥深さが楽しめる。
Chef’s Memo 黒色をした西わらびの燻製は、コリコリとしていて、噛むほどに薫香が広がる。ハート型で添えられているのは、西わらびのおひたし。口の中でトロリとほどける。
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食物繊維は60℃以上になると分解していきます。温度が高いほど柔らかくなりますので、温度計を使って好みの柔らかさを探してみてください。(鈴木さん)
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鈴木智之さん
西和賀町出身。1966年生まれ。大学進学後、帰郷し調理の道へ。リゾート旅館の料理長を経て、2017年に独立。地元の旬の食材を使用した料理は、フレンチ、イタリアン、和食、郷土食などの要素を融合し、独創性が光る。
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岩手県西和賀町本屋敷48ー190ー6
営業時間:ランチ12:00~14:00、カフェ14:00~16:00 ※ディナーは要予約
定休日:月曜~水曜 ※12月~3月は土日のみ営業
電話:090ー8786ー1990
「西わらび」の取材は、
下記の皆様にご協力いただきました。
- 西和賀わらび生産販売ネットワーク(西和賀町農業振興課)
〒029-5692 岩手県和賀郡西和賀町沢内字太田2-81-1 TEL:0197-85-3415 - 縄文の谷 KITCHEN 開
〒029-5513 岩手県和賀郡西和賀町本屋敷48-190-6 TEL:090-8786-19906 - (株)西和賀産業公社
〒029-5512 岩手県和賀郡西和賀町川尻40-73-11 TEL:0197-82-2211