Vol.009 南部一郎かぼちゃ
果物と比較されるほど、糖度の高い南部一郎かぼちゃ。
その秘密は、収穫後のキュアリング（風乾・追熟）にある。
温かなハウスの中で、藁を敷いた棚の上に並べられ
静かに熟成を待つ。
約１カ月、毎日のように寝返りをさせ、
汗をかいていたら丁寧に拭きとり、
夜冷えするときは不織布をかける。
生産者の献身が、鮮やかなオレンジ色と
豊かな甘みを引き出す。
鶴首系かぼちゃでは日本でも最北端の品種。寒さや病気に強い。１株で２～３個の収穫が一般的だが、このかぼちゃは30個前後も穫れる。甘みが強く、生食も可能。
一関市の本寺地区は、地域一丸となって南部一郎かぼちゃの生産に取り組み、今では一大産地として知られている。同地区で農業を営む佐藤弘征さんは、2010年に「骨寺村荘園カボチャ研究会」を立ち上げる。約２年にわたり地区の生産者全員で勉強会を兼ねた共同栽培に取り組んだ。結果、地区全体の生産技術が向上し、品質の高評価につながった。
「うちの研究会の出荷条件は、糖度が15度以上。このかぼちゃの良さを存分に味わっていただきたいですから」
南部一郎かぼちゃは５月末頃に苗を植え、９月の下旬から収穫が始まる。寒さにも病気にも強いので育てやすく、重要なのは収穫後だ。収穫したかぼちゃは、ハウスの中でキュアリング（風乾・追熟）という工程を行う。状態をみて表裏を返したり、水滴が付いていたらこまめに拭きとる作業を約１カ月続ける。果実並みに糖度が高く、カロテンも豊富な南部一郎かぼちゃの潜在力は、地道な作業をしなければ引き出されないのだ。
約１カ月のキュアリングを経た南部一郎かぼちゃは、糖度が15度を超える。柿やぶどうと同様であり、糖度も色あいも似ていることからマンゴーに例えられることもある。カロテン（ビタミンA）の含有量も際立っており、西洋カボチャが１００ｇあたり4,000μgに対し、南部一郎かぼちゃは5,350μgも含まれている。
※2008年日本食品分析センター 分析試験成績書より。
佐藤弘征さん。一関市出身。平成８年に会社を退社し、農業を営む。一方、平成４年から29年まで一関市議会議員を務める。平成19年に骨寺村荘園カボチャ研究会を立ち上げ、南部一郎かぼちゃの栽培に取り組む。
南部一郎かぼちゃは2010年に品種登録された、岩手生まれの新しいかぼちゃだ。育成者の小山田智彰さん（岩手県環境保健研究センター上席専門研究員）は、以前から冬に野菜の出荷が減ることを懸念していた。「岩手の農家さんのために、稲刈りが終わった後に出荷ができ、病気に強いかぼちゃを作りたい」。
日本在来種である鶴首系のかぼちゃの種を共同育成者３名から収集し、交配をくり返して最後は分離育種法という技術を使い開発。新品種を誕生させるまでに8年の歳月を要した。
南部一郎かぼちゃには、小山田さんの情熱が込められている。
「南部一郎かぼちゃ」を
誕生させた
小山田智彰さん。
東京を中心に大型レストランを展開する株式会社銀座クルーズは、岩手県産食材を積極的に利用し、「黄金の国、いわて。」応援店にも登録している。
同社が運営する「ベニーレ・ベニーレ」では、南部一郎かぼちゃを通年で使用。「かぼちゃのポタージュスープ」は、ウェディングパーティの定番スープとなっている。料理長の菊池亨氏は、「甘さが一気に口の中に広がって、他のかぼちゃとは違ったんです。これだけ甘いなら、素材の味を活かしたデザートも作れると感じました」。
菊池料理長は岩手県遠野市の出身。岩手への思いは強く、「今回創作したパスタには南部一郎かぼちゃとゆきちからの他にも、岩手町のベーコン、八幡平市のマッシュルームを使用しています。料理を通して、これからも岩手の魅力を発信していけたらと思います」。
南部一郎かぼちゃのピューレと生クリームを合わせたソースは、濃厚で舌触りがなめらか。フェットチーネは岩手県産小麦「ゆきちから」を使用。小麦の甘みとモチッとした食感が特徴で、濃厚なソースと相性抜群。
岩手県遠野市出身。調理師専門学校卒業後、都内のホテルでフレンチやイタリアンの修行を積む。2011年に「リストランテ ベニーレ・ベニーレ」の料理長に就任。毎年産地見学を行い、生産者の思いを大切にしている。
角切りにして容器に入れ、霧吹きをしてからラップし電子レンジへ。200gの場合、500Wで12分程度が目安。
岩手県農林水産部流通課
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