これまでシェフツアーや商談会などを開催し、日本そして世界を股にかけるシェフたちと、岩手の食材・生産者をつないできた「ロレオ―ル」の伊藤勝康シェフ。南部もぐりの磯崎さん兄弟とは10年近く前から親交を深めている。
一緒に船に乗り込み、漁を間近で見学したことも。緊迫した空気を肌で体験し、「命綱を付けて海へと入る姿は、まるで神事を見ているようでした。命を懸けて獲った食材だからこそ、調理の際、気持ちが入ります」と語る。
ホヤは熱を加えることで、
風味と食感が変化
「料理は、その素材が持っていない味を加えるか、素材が持っている味に合わせるかがポイント」と伊藤シェフ。塩味、甘味、酸味、苦味、旨味の五味を持つといわれるホヤだが、キュウリと合わせることが多いのは、ホヤの苦味のレベルとキュウリの皮の苦味のレベルが似ているから。山菜の季節ならシドケもよく合うそうだ。
今回紹介するのは、茹でたホヤの表面を軽く炙り、滅菌海水で作った寒天と合わせた一品。炙ることで香ばしさが引き立つ。歯触りも変化し、やさしく押し返すような弾力がクセになる。「ホヤが苦手」という方にこそ試してほしい調理法だ。