特集

イーハトーヴォ・アラカルト「純情の多い料理店」雑穀・そば編

お米より歴史の古い雑穀文化

「おらほの匠」でも紹介しましたが、冷涼で山間地が多い岩手県北部では、水田が少なく畑作が農業の中心でした。昭和20年代後半までは、白米のご飯が晴れ食とされ、正月や節句、田植え、お盆などに食されるくらいで通常は、日常は米とヒエ、またはアワなど米と雑穀の寄せ炊きが中心でした。米に代わる主食として大きな位置を占めていたのがヒエ。そのほか小麦、アワ、そば、大豆などの穀物・雑穀が盛んに栽培され、これらを軸とした食文化が発達しました。

雑穀は、日本の食生活において歴史が古く、遺跡などの調査から日本では主食の米よりもはるか遠い太古から我々の生活と深いつながりを持っていたことが分かっています。

戦後行われた農地改革や圃場整備事業により、中山間地域の水田化が急速に進み、食の西洋化とあいまって雑穀の生産は激減しました。しかし、近年の健康食ブームにより雑穀の様々な栄養分、機能性が見直され、にわかに注目を集めています。県北部をはじめ岩手は日本有数の雑穀の産地として脚光を浴び、県内各地で積極的に雑穀栽培に取り組んでいます。

●県内の雑穀の生産状況(県農産園芸課しらべ 平成14年度)
品目 栽培面積 主な産地
そば 874ha 安代町、雫石町、紫波町
ヒエ 122ha 大迫町、東和町、紫波町
アワ 19.4ha 岩手町、二戸市、東和町
キビ 18.1ha 二戸市、岩手町、川井村
アマランサス 6.3ha 軽米町、湯田町、二戸市
だったんそば 2.0ha 軽米町、岩泉町
ハトムギ 50.1ha 衣川村、東和町、雫石町
タカキビ 8.0ha 大東町、川井村、宮守村

次に、雑穀に数えられるそばについて調べてみましょう。

現在では、家庭でも手軽に食べられる一方で、自ら打ったり、粋な食べ方まで語られるほど人気が高い「そば」。

そば切と呼ばれる麺状のそばが食べられるようになったのは、江戸時代初期になります。

そば切の大衆化が可能になったのは、つなぎに小麦粉を使う方法を朝鮮僧元珍が東大寺に伝授したことが始まりといわれています。このそばはそば粉のみの「十割そば」に対して「二八そば」と呼ばれ江戸の庶民の味として親しまれました。

また、江戸時代の僧侶の修行には、「五穀断ち」「火断ち」といった荒行があり、五穀には入らないそばを川の水で浸して飢えをしのいだという言い伝えもあります。

ざるそば そばかっけ

そば切が流行する前は、「そば掻」(そばがき)や「そば団子」などが多く、農民の間でも食されていました。岩手では、この「そば掻」を「そばかっけ」と呼び、にんにく味噌を付けて食べるなど郷土料理として有名です。(いわて純情通信創刊号に掲載

一方で、戦前の東京では、そばは、夜に一杯飲みながら食べるというのが粋とされ、夜中まで営業していたそば屋も多く、「大人のごちそう」、「粋な食べ物」とされていました。

そばの効用は注目度が高く、なかでも「ルチン」と呼ばれる成分は、そばの実の殻に多く含まれる栄養素で血圧降下作用や、毛細血管の強化、糖尿病の予防に良いとされています。また、記憶細胞の保護・活性化に役立つことが分かっています。

今回の特集は、このように栄養面でも申し分のないそばをはじめとした雑穀を、一風変わった、しかもご家庭で簡単に調理できるそばレシピをご紹介しました。

へっちょことは岩手県北部でへそを意味します。「雑穀へっちょこ汁」

「雑穀へっちょこ汁」調理例へっちょこを調理中

■材料
雑穀(アワ、キビ、大麦、いり胡麻、アマランサスなど)米粉、もち米粉、強力粉、鶏肉(霜降り・薄切り)、ゴボウ、にんじん、大根、きのこ(しいたけ、えのき茸など)、ねぎ
■作り方
@米粉ともち米粉を一晩水につけて、なじませます。
Aごぼうはささがきにして水にさらします。にんじん、大根はいちょう切りにして茹でます。きのこはそのまま入れて構いません。(きのこはいろいろ種類が入った方がより美味しくいただけます。)
B@を強力粉とぬるま湯で耳たぶくらいの固さい練り上げながら、雑穀を入れます。
C練り上げたものをピンポン玉の半分くらいの大きさにとり片面を親指で押しつけます。これでへっちょこの完成です。
Dへっちょこは鍋に入れる前に一度湯通しします。
Eだし汁は鶏がらでスープがとれればよいのですが、市販の固形スープや液体スープでも構いません。調味料は醤油、酒、みりんで味付けしますが、あまり色が濃くみえないように醤油は薄口と濃口を半々にしたほうが良いでしょう。
Fだし汁が入った鍋にAで用意した具と、へっちょこを入れ、煮込めば完成。

この季節、旬の柿を使った一風変わった料理です。「雑穀白和え柿釜盛り」

「雑穀白和え柿釜盛り」調理例盛り付け中

■材料
雑穀(アワ、ヒエ、大麦、アマランサス、キビ)、柿、豆腐、コンニャク、にんじん、しいたけ、絹サヤ、くるみ
■作り方
@豆腐を茹で、さました後すり鉢で下ごしらえします。
Aにんじん、コンニャク、しいたけ、絹サヤ、に下味をつけます。
B豆腐は、醤油、砂糖、塩(少々)で味付けします。かくし味に、くるみのすりおろしを入れればなお美味しく召し上がれます。
C@を混ぜ合わせ、茹でた雑穀を入れます
D柿の上1/5を切って、下の部分の中心をきれいにくり抜き、くり抜いた部分にCをよそって完成。

そば寿司が、古代米、あわの衣を纏った逸品「雑穀そば寿司揚げ」

「雑穀そば寿司揚げ」調理例調理中

■材料
生そば(乾麺でもよい)雑穀(古代米、アワなど)、エビ、マイタケ、ししとう、玉子、海苔
■作り方
@そばを茹でて、海苔で巻き寿司状にします。
A古代米やアワなど雑穀を混ぜた天ぷら衣をつくり、そば寿司にまぶし揚げる。
Bエビ、マイタケ、ししとうは小麦粉、卵白をつけ、雑穀をつけ揚げる。
※つけ汁は、鰹だし汁4、醤油1、みりん1とする。
東アジアの地図

韃靼(だったん)そばって何?

「韃靼」とはモンゴル系の一部族タタール(塔塔児)の意味です。韃靼民族は古くから韃靼そばを貴重な栄養源としており、また、長寿であることから、最近注目されています。では、私たちが普段食べているそばとはどう違うのでしょうか?

普通そばが北半球を中心に広い範囲で栽培されているのに比べ、耐寒性に優れている韃靼そばは主に高山地帯で栽培されています。主産地は、中国、ブータン、ネパール、北インドなどの標高2,000〜3,000メートル以上の山岳地帯で、中国雲南省、四川省などが有名です。(図1)岩手県では、軽米町や岩泉町でわずかに生産されている希少価値が高い韃靼そばは、古くから漢方薬として使われているほどで、普通そばと比較してルチンが豊富に含まれています。また、良質なビタミンやミネラルを豊富に含み健康食品というイメージが強いそばです。

韃靼そばは茹でると黄色くなり、普通そばにくらべ少し苦味があります。これは韃靼そばが普通そばに比べてルチンを多く含んでいるためです。
「苦そば」とも呼ばれる「韃靼そば」。まずは一度試してみてはいかがですか?

※韃靼そばはその苦味から普通そばに2〜3割混ぜて作られるのが一般的なようです。

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