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生産者が語る、いわての食財。

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いわての一生懸命を、食卓に。「シェフが使いたい牛肉No,1※。いわての自然と人の思いが育む「いわて短角和牛」。(※料理王国調べ)」柿木畜産 柿木敏由貴さん

人も牛も一緒に暮らす。
いわて短角和牛には、
そんな原風景がありました。

この日の岩手の山間部は、とりわけ寒く、日中でも-11℃。強い風が吹くといったん降り積もった雪が舞いあがって地吹雪のようになります。久慈市山形町(旧山形村)は、沿岸部から内陸の盛岡まで塩を運んだ野田街道が通り、牛たちは農作業だけでなく、塩の運搬にも欠かせませんでした。だからこの辺りの人たちは、とりわけ牛を大切にしてきました。伝統的な農家の建築様式である、南部曲り家(なんぶまがりや)は、母屋と厩がL字型につながる構造。寒さの厳しいこの岩手で、人も牛馬も一つ屋根の下で暖を取るための住まいのかたちです。いわて短角和牛は、こうして飼われていた牛たちの子孫です。 山形町につくと「いわて短角和牛」の生産者、柿木さんが出迎えてくれました。

その年生まれた子牛は、
夏の間、母牛と山の牧場で育つ。

母牛の牛舎に案内されました。掃除が行き届いていて、清潔です。

「3月は、短角牛の出産が一番多いんです。子牛が生まれると、5月には山の牧場に母子で放牧されます。子牛は、母牛の乳と牧草を食(は)んで、大きく育ちます。生まれたとき30kg前後だったものが、10月には250kgにまでなるんです。」

 黒毛和種の肉牛の多くは、生まれてから出荷まで、牛舎の中で肥育され、放牧されることはまれです。芸術品ともいわれる霜降り肉をつくりあげるためです。一方、短角牛は、放牧によって、筋肉質で脂肪分が少ない肉質に育ちます。赤身の肉は、噛みしめると肉本来の旨味がひろがります。

「なぜ3月が出産ラッシュかというと、放牧されているときに自然交配で母牛が妊娠するからです。牛の妊娠期間は285日で、5月~6月にかけて身ごもると3月に出産となるわけです。10月半ばに牧場から、牛舎に移ると母子は分かれて、子牛は体を大きく育てるため、母牛は次の出産のための肥育に入ります。子牛は肥育をはじめて1年から2年の間に出荷となります。」

飼料は地産地消にこだわる。
内臓まで健康な牛に育てる。

秋から冬にかけての肥育期、牛舎では、干し草に加えて、トウモロコシ、穀類、豆類を餌として与えます。

「トウモロコシは、うちの畑でできたものを、葉も茎も粉砕して発酵させたものを与えます。
穀類、豆類もすべて、北東北産のもの。その土地で生まれた牛が、その土地でできたもので育つことにこだわってます。地産地消は、確実に、肉の味の違いに出ると感じてます。
あるシェフは、うちの短角牛を調理すると、厨房に充満する香りがちがうって言ってくれます。牧野で過ごすと、牛が健康で骨太に育ちます。内臓まで健康。だから、味もいい。飼料も太らせるためじゃなくて、健康に育てるために与えてます。」

「短角牛は、ダメだ」 そう言われてもこの牛にこだわった。

いま、「いわて短角和牛」は、フレンチ、イタリアンのシェフたちの注目を集める食材のひとつです。料理専門誌『料理王国』の牛肉特集では、牛肉の産地として岩手県がNo.1。牛肉の銘柄では『いわて短角和牛』がNo.1でした。生産者が品質を高める飼育方法にこだわってきた結果の高い評価ですが、生産者の経営上の課題もまだ多いそう。A4、A5ランクといった、牛肉の価格を決める等級。これは黒毛和牛の霜降り肉を評価する物差しで、赤身の短角牛は、いい評価をしてもらえないのです。そこで、山形町では、契約販売、つまり、顧客に買い上げてもらう分を生産する形で、「いわて短角和牛」ブランドを育成してきました。

「私が、父の仕事を手伝い始めた20年前は、短角牛をどう育てるのか、方向性が決まっていませんでした。うちの家業は、もともとは家畜商。親父の代から畜産を始めたんです。そのきっかけは、年々、短角牛を育てる農家が減っていて、いずれ自分で育てないと短角牛がいなくなってしまうという思いからでした。私は岩手県立農業大学校で畜産を学んで、黒毛和牛を育てる現場も研修で体験しました。黒毛和牛の値段がいいということも知ってました。研修先では、『これから先、短角はダメだ』とも言われました。それでも、短角牛にこだわってきたのは、牛肉本来の美味しさと、子どもの頃から見慣れてきた牛が短角牛だったからです。子どもの頃、親父について牛の買い付けに農家さんを訪ねたときに聞いた話です。家畜商は、牛の値段をつけるために寝ている牛を立たせないとならないんですが、ある家畜商が牛を蹴飛ばして立たせたところ、その農家では怒って、その家畜商には売らないってなった。そのくらい牛を大事にしていたんです。当時は、南部曲り家で、人用、牛用の竈(かまど)があって、そんな原風景もあって、売れない短角牛より黒毛和牛とはならなかった。それでも、短角牛の価値をわかってくれるお客さんがいて、お客さんたちの声に耳を傾けているうちに、短角牛の目指す肉質がみえてきたんです。」

ステーキ以外の短角の魅力を、
もっと、もっと、見つけて欲しい。

いま、産地を訪れるシェフや流通業者の方が増えてきているそうです。

「シェフの間では、評判こそ高かったんですが、以前は産地まで足を運ぶ方は少なかったんです。それが、ここ数年、ずい分と増えた気がします。食の安全性への関心もあって、食べ物がつくられる環境を見ておきたいということのようです。飼料の地産地消の話も熱心に聞いてもらえますし、中には牛そのものを見るのが初めてのシェフもいて、牧場をお見せすると、必ずといっていいほど短角牛に関心をもってもらえるんです。以前は、ステーキ肉としてロースやヒレなどの引き合いばかりでしたけど、最近は、ランプ肉(もも肉)の味の良さ、やわらかさからステーキ用に求められることも増えました。クビやスネといった部位は筋肉質で堅いんですが、その分味が濃いんです。煮込み料理に使われることも増えてきました。調理すると草や山の大自然のいい香りがするそうです。」

最後に、生産者から全国のみなさんへのメッセージをいただきました。

「いわて短角和牛は、岩手の自然の中で、きれいな空気、水、地産地消の餌で育った、おいしい牛肉です。噛みしめると、肉本来の力強い美味しさが味わえます。みなさん霜降りの美味しさはひと通りご存知かと思いますので、ぜひ一度『いわて短角和牛』をお試しください。自分の好みで牛肉を選んでみてはいかがでしょうか?」

シェフたちも注目する、赤身のおいしさ「いわて短角和牛」。印象に残ったのは、生産者の思いが育てた、地域に根差したブランド牛誕生の物語でした。人と食のかかわりで大切なものを教わった気がします。

いわて短角和牛との出会いが、食材への理解を深めるきっかけだった。「マルディグラ」オーナーシェフ 和 知徹さん

「いわて短角和牛を使い始めたのは、18年前。東京では、うちのほか2~3軒のレストランしか使ってなかった。当時、短角牛は人気がなくて、売り方もよくわからないみたいだった。

黒毛和牛みたいに「しゃぶしゃぶ」で、売ろうとしたりね。うちでは、2週間さらしに巻いて熟成したブロックを、厚切りにして焼く。当時からそうやって調理してきた。都内では入手しにくいから、産地にまで行って、生産者の方たちと交流したことはいい経験だったね。その後、岩手県主催の「いわて短角牛」をブランドに育てるための勉強会に呼ばれたり、短角牛との関わりが一層深くなっていったんだ。「いわて短角和牛」は、山の香り、森や草の香りがするんだ。旨味が強く、脂が先に来ないからストレートに肉の美味しさを味わえる。水がきれいな場所で育ったから、濁りのない澄んだ味わいなんだ。」

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